犯罪弱者である子どもが「京王線放火殺人事件」のような電車内で発生する突発的重大犯罪を回避するには、どういう行動を採れば良いか、犯罪企図者の行動を頭に置きながら検討しよう。

<事前の電車選択行動>

 危機回避行動の第1に考えられることは、被害者になる子どもはこの種犯罪が起こりそうな電車を事前に選択し、その車両に乗らないようにすれば良いということである。子どもはどのような車両を選択し乗り込めば良いか。大変難し。しかし逆に言えば犯罪企図者はどのような車両を選択して乗り込む可能性が高いかを探り、子どもはその車両を避ければ良い。

 犯罪企図者の意思決定は、意図するか否かに関係なく、多くの場合罪種に関わらず極めて合理的になされる。その合理的行動の第1は、京王線のケースの前に起こった小田急線内での同種重大犯罪でもそうだったが、犯罪企図者は自分の狙い(一人でも多くの人を楽して犠牲にしたい)を最大にすることを目的とした「(自分の人生をかけた)車両選び(選択行動)」を行う。それは車両の「先頭と最後尾」のあまり人が乗っていない車両は、犯行車両としては選ばないという行動に表れる。しかし全く人の居ない、あるいは極少数の人間しか乗り合わせていない車両も避ける。その車両には「乗り込まない」。彼にとっての「獲物」が少ないことによる。(添付図1参照)。しかしあまりに混雑した車両も選択しない。自分の行動が制約されることによる。ほどほどにスキスキで、ほどほどに人の乗った車両(とその時間)が好まれる。私どもが面接した元犯罪者もそうであったが、犯罪企図者は、一般に実に我が儘であり利己的である。だから犯罪を実行できる。(この稿、続く)

(文責 清永奈穂 清永賢二              2021/11/05)