あの事件を通し、以下の様なことが考えられました。

➀あの種の犯罪企図者(以下、犯行企図者)は過去の事件例から学習し、犯行を進化させ巧妙化を深める。

即ちあの種犯罪は模倣犯的に連続しやすく、犯行形態は前の事件より悪質化し深化する。

②犯罪企図者は、設定した犯行目的が達成しやすければ=目的達成が容易であれば「どこでもいつでも誰にでも」襲いかかる。

即ち小田急線事件もそうであったが、大量の被害者が身近にいて、かつその被害者が危機を回避することが困難な状態(電車内=周りがガラスと軽金属の壁に囲まれ放火現場から逃散=チリジリバラバラに逃げにくいという危機回避行動が採りにくい)という条件、つまり「良い獲物に近づきやすい」という条件が整えば、覚悟を決めた犯罪企図者は自分自身が犯行現場から逃げ難い場所でも躊躇わずに強行する。

③自分を捨てた=死をも覚悟した犯行企図者の犯行実行を止めるのは、カメラの設置などでは極めて難しい。

即ち犯罪企図者の事前行動把握と行動阻止は著しく難しく(AIを使用した犯罪者予備軍抽出実験が進められていると言うが、これはこれで大きな問題を抱えている)どう対応して良いのか分からない。

以上➀②③の結論としてこうして見ると今回の京王線放火殺人事件の発生を予測しストップさせることが如何に困難中が分かるなかが分かる。では何もできないか。メデイアの報道では「どうしようもない」の論調が流れる。だが諦めるのは早い。犯罪者の行動を中心に、この種犯罪から逃れるための知恵は少なからず集積されている。

被害者予備軍、特に犯罪弱者と言われる高齢者・女性・子どもなど、特に未だ危機への対応力の低い塾通いの子どもが凶行から回避する事前・直前・発生直後の行動(その前どうする・そのときどうする・その後どうする)は十分に考えられる。こうした場所を選ばぬ突発的じあんにたいしては、徹底した「個体強化」策を進める必要がある

例えば彼ら弱者は「どの位置で電車に乗り」「電車内でのどの位置の席に座り」「その席で周囲にどのように目配りし」「早く不審者行動を見つけ」「それを発見したときどのように行動すれば良いか」といった基礎的教養を身につけるだけで、十分とは言わないが、被害者化を防ぐことができるはずだ。

そのことにより「何もできない、できない」と無力感に浸るのではなく、「何かできるのだ」という危機回避に必要な最少の安全・安心行動(個体強化)を採ることができるのではないか。

こうした「いかに危機を乗り越え電車内で遭遇するかも知れない危機」を事前・事中・事後に乗り越えて行くかについて、犯罪者の行動を念頭に置いて、子どもの危機回避を例に取り上げながら,以後述べてゆこう。

(文責 清永奈穂 清永賢二          2021/11/04)