私たちは、犯罪等の危機に遭遇した「その時」、その危機を乗り越える「力=能力」を「安全基礎体力」と名付け、これまで子どもたちや女性・高齢者の方々に「安全基礎体力」を身に付け「危機を乗り越え安全安心な生活を確保する」ための工夫(体験型指導法)を検討してきました。

今年の10及び11月の間にT県S市の高校で、生徒達(Ⅰ年生330名、3年生295名)がどの位の「安全基礎体力に関する基本的知識力と判断力(実行力が入っていないが、この知識力と判断力は安全基礎体力を構成する重要な要素。場合によっては「安全基礎体力」と云って良い)」を身につけているか、➀何もしない普段の時、②犯罪からの安全指導を受け、一定時間を置いた後、この2時点間の差を生徒達への調査表調査で計りました。

どのような調査項目で計ったかを示しますと、以下の様な5項目について「はい(あるいは正解)」か「いいえ」かの回答を求めました。

➀犯罪者の基本行動に関する基礎知識(下の➀から⑤の内の➀の項目)、②犯罪者の接近回避及び安全確保逃走距離に関する基礎知識(同じく②③の項目)、③声かけ断り能力に関する基礎知識(同じく④の項目)、④共助能力に関する基礎知識)(同じく⑤の項目)。

  <安全基礎体力に関する基礎知識項目>
  ➀犯罪者は何メートル前から、あなたに目をつけていると思いますか。
  ②駅や道などで、変な人とすれ違うとき、最低どの位の間を空けると良いと思いますか。
  ③危ない人から逃げるとき、ともかく最低何メートル全力で走ればよいでしょう。
  ④あなたは、知らない大人の人から、突然、とてもほしいと思っていたモノを「あげる」と言われ、
   きっぱり「いらない」と言える自信がありますか。
  ⑤あなたは、友だちが、下校中に危ない人から「からまれ」て、困っているとき、その友だちを自分から進んで助けてあげようと思いま        
   すか。

なぜこの⑤項目を選んだかは、また別の機会で説明いたします。

最終的にはS高校の生徒たち一人一人に、この5項目への「はい(あるいは正解)」という回答を調査し、その「はい」の数が多い生徒ほど「安全基礎体力に関する基礎知識あるいは判断力」は高いと判定しました。

5つの項目の「はい」ですから、以下の表に見るように、当然最高で5点、逆に一つも「はい」のない場合は最低ゼロ点となり、ここで計られる安全基礎体力(基本的知識と判断力)は「ゼロ点から5点」までの6段階の分布となります。

こうした計算で得られたS高校の生徒間における「安全基礎体力」の分布を示したのが下の表です。

この表から見ることのできる結果の内、主なものとして以下のことが挙げられましょう。

 

➀安全指導(講演会)を行う前の段階、即ち何もしない通常の状態で「5点満点=安全基礎体力に関する知識と判断力を十分つけている段階」の者は、生徒全体の10.6パーセントにすぎません。

②こうした傾向に高校1年と3年で大きな違いはありません(1年と3年で安全基礎体力の保有に差は無い)。また表を示していませんが男女の性差もありませんでした。

③こうした傾向が安全指導(講演)後の一定時間を置いて成された調査の数値を見ると大きく異なって来ており、「5点満点」の者が27.1パーセント、「4つ○」の者と合わせると全体の8割以上を占めました。安全指導(講習会)の安全基礎体力づくり効果の大きい事が分かると同時に、こうした指導を受けた彼ら彼女らは、高校時代のみならず、もうすぐ始まる高校卒業後の一般市民生活でも安全安心な市民生活を過ごすことが出来る事がうかがえます。

 

➀安全指導(講演会)を行う前の段階、即ち何もしない通常の状態で「5点満点=安全基礎体力に関する知識と判断力を十分つけている段階」の者は、生徒全体の10.6パーセントにすぎません。

②こうした傾向に高校1年と3年で大きな違いはありません(1年と3年で安全基礎体力の保有に差は無い)。また表を示していませんが男女の性差もありませんでした。

④逆に言えばこうした安全指導を1年あるいは3年の時に受けなかったならば、80パーセント近い高校生は「その時」危害を加えようとする犯罪者と無防備なまま、あるいは幾つもの弱点を抱えたまま対峙することになるものと思います。

 ④こうした傾向に1年と3年の間の差はほとんどみられません。即ち安全講習会を高校で開催するなら早い段階で開く方が「その時に備えた」高校生活を送ることに効果的で、その必要もあるということがいえます。

 ⑤こうした傾向に1年と3年の間の差はほとんどみられません。即ち安全講習会を高校で開催するなら早い段階で開く方が「その時に備えた」高校生活を送ることに効果的で、その必要もあるということがいえます。

高校生段階になるとSNS問題など新たな危機が増してきます。それに対する対応も安全基礎体力に加える必用があります。私たちは、こうした生徒達の安全安心をさらに追いかけてゆく所存です。

この調査結果は、調査及び指導(講演)に際して多大なご迷惑をお掛けした関係機関への報告書として、現在、まとめつつあります。

(文責  清永奈穂 安蒜まどか 木下史江     2022/11/10)