鞄を捨てて逃げることの大切さを初めて確認したのは、私たちが愛知県春日井市で行った実験によってであった。
その後、特に小学校低学年の子どもを中心に熱心に「捨てて逃げよう」の試みがなされている。
それはそれで子どもの安全に寄与したと思えば良いが、そう楽観的に取り組んでもおれない状況が生じている。
それは、①幾つかの事件で鞄を捨てて逃げた子どもが殆どいないこと、つまり逃げ切れなかった(鞄捨ての練習をしていても。そうなると安全マップ作りと同じで、マップを作ったが被害児は多発したという状況に似通う)、②捨てることの意味は認めるとして、捨てた方が良いか捨てない方が良いかのさらなる精緻な検証を進める必要性を生じさせた。
特に私たちの実験もそうだが、ほとんどの実験や指導は「鞄の中に何も入れていない空の状態で走らせ、捨てさせる」という条件下で行われている。
人間特に体力の無い子どもの場合は、どの位の重さ(荷重)が背中に掛かっているかによって走るタイミングと走りきれる距離に大きな違いが出るのは当然である。
子どもは学年が進むに連れ鞄の中に入れるモノの数が違ってくるし、当然重さも違ってくる。そういう現実を考慮に入れず、10年1日のごとくいつもいつも変わらず鞄を捨てて逃げろではなく(こういうのを●●●出し、という)、子どもの安全を確保するため、こうした点を考慮した実験がなされ、現実性のある指導をするべきである。
子どもの安全指導は、状況に応じて変化しなければならない。それも実証性科学性を伴った検証を背景になされるべきである。こうした指導によって子どもの発達段階に応じた指導ができる。
(文責 清永賢二 2016年9月13日)