最下表を見てもらいたい

 「防犯モデル道路」を最初に設置した名古屋市守山区白沢学区の関連事業と経費である。これだけでこのモデル道路設置地区から3年間で犯罪は3割減少したのだ。もちろん子どもの被害事件は1件も発生していない。

この表から見える「防犯モデル道路」の注目点は3つである。
1.何か特別な仕掛け、あるいは高価・高機能なモノを設置したのではない。場合によっては手作り感覚でできる安価なモノを使用した.
2.モデル道路(子どもの使う動線)及びその周辺(両脇)への監視性の確保・強化と威嚇性を強調した。
3.住民の安全確保という目的の明確な住民運動(community Activity)」であった。

 この3点の中でも現場を訪れた元犯罪者が指摘したのは「看板なんかどうでもいいけど、一番嫌なのは『住民総出犯人追跡模擬トレーニング』。犯人をその周辺の住民が総出で追いかける、これは絶対に嫌ですね。
 例えば子どもを襲った犯人を電柱の赤色灯(警報ベル付き)がピカピカ、ビリ
ビリ鳴り響いたら村中みんな出てきて追いかけるのでしょう、もうこれはリンチ
です。絶対に嫌です。
 それをNHKで放送する新聞に載せるはしたら効果抜群です。犯罪者はテレビや新聞をよく見る。だからこれはやばいと避ける。問題はこ
れが長続きするか、です。3年もこのまま(何もせず)ほっとけば(犯罪者は)帰ってきますよ。この3年間いどんな工夫をつけるかが勝負」といった。

こうした防犯モデル道路の取り組みから最終的に紡ぎだされたのが「住民中心の攻撃的防犯」であり、住民による住民安全のための地域診断、即ち隣接する春日井市の市民安全課が考案した住民ー役所一体の「暗がり診断(地域診断マップ作り)であり、後の住民―役所―警察が一体となった地域安全確保の「三位一体論」であった。

 後の日本の地域防犯活動をリードするコンセプトは、通学路の安全確保を目指した「防犯モデル道路」の守山市と、暗がり診断にあらわされる春日井市の活動の中にほとんどが生み出されていたのである。

(文責  清永奈穂 八手紘子 林成子   2019・09・12)