「犯罪からの子どもの危機の実態に関する研究」

日本女子大学総合研究所紀要(2010年秋刊行)に掲載した一部を御紹介いたします。

子どもの研究は、さまざまな全国各地の研究者によってなされています。

ここでは日本女子大学清永研究室が行った子どもの被害研究を御紹介します。

 

 


 

犯罪からの子どもの危機の実態に関する研究~小学校を中心として~

Study on the Critical Situations of School and Child by Crimes in Recent Japan ~Through Analyses the primary Schools and Children~

 

代表:清永賢二(日本女子大学市民安全学研究センター長)*

    田中賢(日本福祉大学准教授)*

    楊(清永)奈穂(日本女子大学市民安全学研究センター研究員)*

     篠原惇理(日本女子大学市民安全学研究センター研究員)

     他

                      (*は主な執筆者/執筆責任者は清永賢二、肩書は2010年11月当時)

 

 我が国における2006年以降の子どもを被害対象とする犯罪の多発は、保護者を中心とした大きな社会的解決課題となっている。このことは、子どもの安全を通し、彼らが築きあげる21世紀社会の有り様に深く関わることである。

 まず、子どもたちや彼らが通う学校を取り巻く危機の実態を知らねばならない。そのことによって、今後有効な対策を検討し展開することが可能となる。

 

Ⅰ部 研究の枠組み

1章 目的

 本研究においては、子ども、特に小学校段階にある児童(以下、「子ども」)に焦点を当て、子どもの犯罪被害の実態を明らかにする。

具体的には、子ども(幼稚園の場合は「園児」)や学校(幼稚園の場合は「園」)が、①実際にどのような内容の犯罪に、②どのような加害者から、③どの様にして、④どの程度遭遇しているか、④その時の被害者(子ども)の状態は、等を明らかにするため、全国調査を実施した。

また、こうした量的調査を進める一方で、子どもたちが実際に遭遇した事件について、その質的内容を検討するための、全国的に重大視された少数の児童対象犯罪被害事件事例についての実査を行った。

 これらの調査によって、現在、子どもが遭遇している犯罪からの危機の実態を量と質の両面から把握した。

 

2章 実施調査

 研究目的に沿って、以下の4種の調査が実施された(図―1)

1.全国義務教育学校・校長及び幼稚園・園長あるいは「学校()安全責任者」対象実態調査

・学校()における子ども被害対象犯罪の発生実態の把握

2.「小学校在籍児童」対象調査

・特定地域小学校の在籍児童犯罪被害の実態把握

   3.全国義務教育学校対象犯罪児童・生徒の実態調査

     ・全国の学校で把握している事件事例の調査

4.「特定事件」事例実査

・小学生が被害者となった特定事件事例実査

 各調査ごとの調査方法等の詳細な内容は、各調査の冒頭で記述する。

 

5.調査結果

 

調査結果は、日本女子大学紀要が発行後詳しく掲載いたします。

一部抜粋をご参照ください。

 

 

調査結果(一部抜粋)

表-37  怖い体験をしたことがあるか 

 

 

怖い体験をした 

ことがある 

怖い体験をした 

ことがない 

合計 

2年生 

性別 

 

 

395 

88 

483 

 

81.8%

18.2% 

100.0% 

 

 

541 

95 

636 

 

85.1%

14.9% 

100.0% 

小計 

 

936 

183

1119 

 

83.7%

16.4%

100.0% 

4年生 

性別 

 

 

333 

62 

395 

 

84.3%

15.7% 

100.0% 

 

 

494 

66 

560 

 

88.2%

11.8% 

100.0% 

小計 

 

827 

128

955 

 

86.6%

29.5%

100.0% 

6年生 

性別 

 

 

314 

56

370

84.9%

15.1%

100.0%

 

414

54

468

88.5%

11.5%

100.0%

小計

 

728

110

838

86.9%

36.9%

100.0%

総計

 

2491

421

  2912

85.5%

14.5%

100%

 

 

表-26      怖いことが起こった時に取った行動(複数回答)

 

 

 

 

走って逃げた

大きな声で叫んだ

ブザーをならした

キッパリ断った

子ども110番の家に

   かけこんだ

お店やお家に

   かけこんだ

近くにいた人に

助けを求めた

何もできなかった

その他

 

4

年生

性別

 

129

9

2

44

4

21

8

45

79

%

51.0%

3.6%

.8%

17.4%

1.6%

8.3%

3.2%

17.8%

31.2%

 

122

6

3

31

4

18

11

50

78

%

47.7%

2.3%

1.2%

12.1%

1.6%

7.0%

4.3%

19.5%

30.5%

合計

 

251

15

5

75

8

39

19

95

157

%

49.3%

2.9%

1.0%

14.7%

1.6%

7.7%

3.7%

18.7%

30.8%

6

年生

性別

 

55

4

1

13

0

7

3

30

52

%

36.2%

2.6%

.7%

8.6%

   0

4.6%

2.0%

19.7%

34.2%

 

100

3

1

29

     0

11

8

47

55

%

46.7%

1.4%

.5%

13.6%

     0

5.1%

3.7%

22.0%

25.7%

合計

 

155

7

2

42

16

18

11

77

107

%

42.3%

1.9%

.5%

11.5%

4.4%

4.9%

3.0%

21.0%

29.2%

 

その時、その後どうした

 ①多くは走って逃げた、でも何も出来なかった子どもも多い


  怖いことに遭った時、児童がどういう行動を取ったかを求めた。 

   「走って逃げた」児童が47%と最も多い(表-26)。

  しかし、その一方で、何も出来なかった」児童が20%も存在する。

  また「大声で叫んだ」子どもは約2%、

  「ブザーをならした」が約1%しかいない。

 

  危機に遭遇した児童の多くは、走って「逃げた」り「きっぱり断って(12%)」いるものの、

  その一方で、「何も出来ない」状況に落ち込んだ児童が5人に1人は居る。


 また、「子ど110番の家にかけこんだ」児童は4年生で僅か1%に過ぎないのに、

 「お店やお家にかけこんだ」が7%、「近くにいた人に助けを求めた」児童が4%存在している。

 「子ども110番の家」が通学路に在るのは68%であり、それも危機遭遇時にその場所にあったか、

 という問題が作用していると見られる(表-27)。

 

 重要なことは、「飛び込める店や家」があること、そばに人がいる、もしくは歩いていることであり、

 利用できるものを「しっかりと利用する」知恵と勇気を児童が身につけること、

 見知らぬ児童でも「見守ってあげる」という周囲の関心の強さの重要性が強調される

 

 被害の行為別に見ると、殆どの行為で「走って逃げた」児童が多い(表-28)。

 特に、「変な感じの人に追いかけられる(78%)」を中心に、

 「変な人につきまとわれる(57%)」や「車に乗せられそうになる(50%)」等の行為で

 「走って逃げている」児童が多い。

 

 注目されるのは、「キッパリ断った」児童が「車に乗せられそうになる(43%)」や

 「変な感じの人に声をかけられる(31%)」などの行為に多いものの、

 その一方で「何も出来なかった」児童が「急に大声でどなられる・おどかされる(30%)」、

 「変な人に体をタッチされる(30%)」、「変な人に体を見せられる(25%)」などに多く遭遇していることである。

 「何もできなかった」ではなく、その場で「何かが出来た・何かをしようとした」ことが出来るよう

 指導する必要がある。

 「何も出来なかった」ことは、不審者に次の加害行動を促すことになりかねない。

       (日本女子大学総合研究所市民安全学研究センター2010年紀要より一部抜粋)


©日本女子大学清永賢二 無断転載をお断りします


 

数字は語る

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2)危機にあった子どもはどうしたか

 それでは危ない目に遭遇した子どもはどう対応したのでしょう。

 驚くべき事実が分かりました(総調査対象者6313名中の分析対象児童=1340名)。

 

 子どもは何も出来ない!!

 何も出来なかった子どもが22パーセントもいたのです(複数回答)。

 

 もちろん逃げた子どもが45パーセントもいました。でも5人に1人近くの子どもは何も出来なかったのです。

 

 防犯ブザーの紐を引っ張れた子どもは僅かに2パーセント。これも驚き。

 

 私たちは、改めて、子ども1人1人がどう危機に立ち向かうかの「安全基礎体力」の形成を本気で考えなければいけない時にいることを実感します。

                      

その時子どもはどうしたか
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